![]() | ![]() |
1940年代のブライトリングは、クロノグラフのトップメーカーのひとつだった。例えば膨大な数のリファレンスの数々だ。リファレンスごとに新しい技術やイノベーションが盛り込まれている。時計と並行して、ブライトリングのユイット アビエーション部門では、ヨーロッパの主要な航空メーカーに供給する計器を製造していた。50年代に入ると、デザインはさらに洗練され、道具としての魅力を増していった。軍事用ジェットエンジンを搭載した航空機が普及したことで、精密さ、正確さ及び信頼性を備えた時計が求められるようになったのだ。数多くの特許を持ち、数十年に渡ってクロノグラフを製造してきたブライトリングは、その10年前に発売されたクロノマットに加え、プレミエやスタイリッシュなスーパーオーシャンが登場するなど、常に時代の先端を走っていた。
TF-86 "の "T "を冠したF-86練習機。西側のジェット戦闘機の中で最も多く生産された戦闘機であり、50年代の軍用航空機の象徴でもある。
AVI Ref. 765は1953年に発売され、今作の復刻版の名が示すように、ジェット機黎明期のニーズに応えた特殊な機能を備えていた。3時位置にある15分積算計は、航空機を安全に運航するために必要なウォームアップ手順と飛行前のチェックの時間を計るためのものだ。当時は、アメリカのF-86セイバーやイギリスのホーカー・ハンターなどのジェット戦闘機の時代だった。レディースギフトガイドこれらのジェット戦闘機は複雑で、当時としてはまさに最先端のものだった。AVI Ref. 765も同様だ。搭載されたムーブメントCal.ヴィーナス178は、標準仕様は30分積算計だが、AVI 765では15分積算計に改造された。また、ダイヤルの視認性を高めるため、当時としては巨大な41mm径のケースを採用した。このモデルは53年から60年代初頭まで製造され、その後、少しずつ異なるAVI Ref.765に置き換えられていった。ルイ・ウェストファレンが2016年にそのうちの1モデルのハンズオン記事をリリースしているのでご覧いただきたい。
AVI Ref. 765は、1950年代のブライトリングを象徴するモデルだ。アメリカやヨーロッパの地上では好景気が続き、空には超音速のブームが到来していたため、ブライトリングは航空時計に応用できる機能の基準を確立した。そして、2020年のブライトリングはそのことを忘れていなかった。
忠実な再解釈
ほとんどの時計は、先代モデルのデザインを再解釈したものだ。それがブランドの特徴であり、同じものを繰り返し使うことで独自のデザイン言語を確立しているのである。ブライトリングはこの時計を "リ・エディション"と呼んでいるが、私はこのネーミングを正当かつ的確だと評価している。フォティーナ(これは確かに“着色に過ぎない”が、ほとんどの場合、復刻版や旧モデルへのオマージュを込めた時計に積極的に採用されている)を施していることや、夜光プロットにラジウムが使われていないことから、旧モデルの精神を受け継いでいないと言う人もいるだろう。私はかなりの期間、この2本の時計を併用していたが、もし53年モデルがNOS(未使用品)で1日たりとも使用されていなかったら、見分けるのにとても苦労しただろう。時計の重さの違いさえも気づかないほどだったからだ。
この時計の動力源は、ブライトリングのCal.B09だ。オリジナルと同じく、手巻き式のコラムホイール式クロノグラフムーブメントである。巻き上げてみると、思わず笑みがこぼれる。リューズの操作性は非常に優秀で、ラチェット歯車が回転するたびにクリック感がダイレクトに伝わってくる。ただし、その様子は、スティール無垢の裏蓋を採用しているため窺い知れない。むしろ好感がもてる点だ。